書籍・雑誌

2008年10月25日 (土)

『その日のまえに』

 今、大林監督の映画で話題の『その日のまえに』を読んだ。久しぶりに1日で一気に読み終えた。電車の中では、まわりの人を気にすることなく、ハンカチを片手に堂々と涙を拭きながら読んだ。
 しかし、重松清は相変わらす上手い! そのあまりの上手さに、読んでいくうちに無性に腹が立ってきた。「おい、おい、上手すぎるよ・・・、一生懸命小説書いている人が、やる気失くしてしまうよ、こりゃぁ敵わないわ・・・って」というのが、読み終えた時の率直な感想だった。例えはうまくないが、左党の私が、甘さを控えた和菓子を食べた時の満足感に似ている。
 先日発売された雑誌に「泣ける小説ベストテン」というタイトルで対談が掲載されていた。その中で、「泣き」には人によってパターンがあるそうで、私はどうやら「少年」のようだ。重松清は、『流星ワゴン』よりも『半パン・デイズ』でより多く泣いた。生涯2番目に泣いた川上健一の『翼はいつまでも』も少年が主人公だ。生涯1番泣いた浅田次郎の『壬生義士伝』では、主人公よりもその息子に大泣きした。客観的に見ると、私の泣きのツボは「少年」に違いない。そういえば、テレビの「おつかい番組」でも泣いていまう。
 『その日のまえに』では、余命を知った主人公が自分の友だちへの「連絡リスト」を作る。先月、私も8月に亡くなった知り合いの「送る会」に参加した。還暦を直前に控えての、若すぎる死であった。100人くらいの人が集まっての盛大な会だった、本人のご意向で、湿っぽい演出は一切なく、酔いが進むにつれて何の会だったか忘れてしまうほど陽気な会だった。奥様の話によると、日時、会場、メニュー、招待客、会費、すべてを生前に本人が、自ら決めたということだった。そのリストを作っている彼の顔が思い浮かんだ。うっすらと微笑んでいる嬉しそうな彼の顔が・・・。
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